知的資産経営報告書

競争優位性を確保し、継続して利益を上げる方策を常に準備し実行することは、企業にとって最も大きな課題です。
インターネットが普及し情報が容易に入手できる現在、消費者が単に価格やブランドだけではなく他との「違い」や「独自性」を考慮する社会においては、製品や企業の力、独自性や差別化の能力が問われているといえます。
「知的資産経営報告書」とは、経済産業省が中小企業に対しその活用を推奨している経営手法のひとつで、知的資産の観点を経営に取り入れることで、自社のあらゆる知的資産経営を積極的に推進する企業法人とその経営者にとって、 外部への理解と影響を求める重要な情報として役立つものです。
特に中小企業への融資判断のなかで活用する方向が話題になっています。
いかに他社と差別化できるか。そして、差別化の為に、各社が有する「知的資産」の活用がポイントになります。

 

知的財産経営とは

知的資産経営を考える上で重要なのは、自社の知的資産とは何か、というものです。

企業が持続的に利潤・利益を確保するためには、自社の強みを維持・強化し、提供する商品やサービスの便宜性や個性を伸ばして他社との差別化を図り、それを自社の重要な経営資源・競争軸として認識、「差別化の状況を継続」することが必要です。

「知的資産」とは、ことばが似通っている特許や商標など「知的財産」とは異なる概念であり同義ではなく、これら知的財産を一部含みながらも差別化を可能にする企業経営上、目に見えない価値のある潜在的な知的情報として、

  • 組織力
  • 人材
  • 技術
  • 開発力
  • 技能
  • 経営理念
  • 顧客
  • 取引先等とのネットワーク
  • ブランド

といった目に見えない価値と、専門性の高い社員一人一人へ浸透しているこだわりや行動指針、CSRなど、 財務諸表の数字には表れてこない、目に見えにくい経営資源の総称をいいます。

目に見えないものではあるものの、企業独自の強み、として評価し得るものです。

 

 知的資産経営を開示・評価する意義

企業が持続的な利益を目指す「知的資産経営」をつづけていくためには、その企業の取り組みを、取引先、顧客、株主、投資家、従業員、地域社会などのステーク・ホルダーに認知・評価してもらうことが重要です。
そのため企業は財務諸表だけでは十分に表現することができない「知的資産」やそれを活用した経営手法について、ステーク・ホルダーに対して情報開示を行う必要があります。これが「知的資産経営に関する情報開示」です。

 

有形資産と知的資産の違い

  知的資産は企業が提供するサービスや製造する生産物の価値とは切り離され、企業価値の源泉としてそもそも保有するもので、将来企業の経済的利益として実現できることが期待されるものなので、製品など有形の提供物資産ではなく、無形の企業所有物でもあります。
経営資産として、何らかの形で企業を構成する社員の知的活動を経由して生まれるという捉え方から、「知的資産」と考えられるものです。  従来、バランスシート上に記載されている資産は、金品など存在があって数えられる有形の資産であり、企業等における競争力の源泉である、人材、技術、知的財産(特許・ブランド等)、組織力、経営理念、顧客とのネットワークなど、財務諸表に表れてこない目に見えにくい経営資源の総称が知的資産です。
会社内外の結びつきや価値、強みである知的資産を経営者が自ら把握し、それを活用することで業績の向上に結びつけることが「知的資産経営」です。 「知的資産経営」、「知的資産経営報告書」は経済産業省が中小企業に対しその活用を推奨している経営手法です。

 

情報開示する企業側メリットとは

知的資産経営とは、企業が自ら保有する固有の知的資産を認識し、それを管理・活用して中期的に持続的な利益を確保する経営であり、知的資産自体が価値を生むのではなく、それを活用した経営が価値を生むもの、とする考え方であり企業の将来を形成する源と考えられます。

 

(1)企業価値が増大する

知的資産経営報告書での情報開示によりステーク・ホルダーから過少ではなく適切な評価を得ることができるので、企業が持つ価値と実力を正しく評価されることとなります。
企業の市場における過小評価が解消されることでM&Aなど企業買収リスクも低くなるでしょう。

 

(2)経営資源が最適に配分される(知的資産マネジメントの実現)

情報開示を実施するプロセスでは、自社の知的資産を外部機関を含めた評価を行うことで価値や重要性、バランスなどが再認識されます。
これらの作用で企業の内部において価値創造につながる経営資源(人材、ビジョン、資金配分など)への最適な再配分を実施することが可能となります。
つまり、経営者にとって重要判断となる企業の価値創造のための資源の認識、再配分、そして集中投資が可能となります。(知的資産マネジメントの実現)

 

(3)資金調達の一助となる(知的資産経営評価融資の獲得)

企業の将来価値や企業の信頼の向上が得られることから、投資家や金融機関からの評価を得て、融資が有利になるなど資金調達の一助となる場合があります。(将来の知的資産経営評価融資の獲得)  特に自社の情報開示の機会が少ない中小企業にとっては、知的資産経営報告を通じて自らの潜在力・成長性を金融機関に示すことができます。
金融機関においても中小企業への融資判断において、この知的資産経営報告書を活用すべきとの議論がなされています。

 

(4)従業員のモチベーションが向上する

企業の成長力の一つである従業員の成長は重要な位置づけです。
従業員が自社の強みや知的資産経営の内容を正確に認識し、会社の方針と目標が共有され、その仕事が将来の企業価値にどのように貢献するか認識できることで従業員個人の、士気が向上します。
即戦力のある人材の確保は常に困難と見られますが、知的資産経営報告を通じた自社の強み・魅力の訴求が可能となることで、優秀な人材確保につなげる可能性があります。

 

(5)知的資産への再投資が可能となる

企業価値の増大や資金調達が容易になることで、一層の知的資産経営の取組みや強みとなる知的資産への投資が可能であり、選択と集中を実践する価値創造のプロセス強化につながります。(知的創造の実現)
実績と継続によって報告の内容・方法も洗練されると同時に、ステーク・ホルダーの理解・信頼感も高まっていきます。

 

 知的資産経営に関する外部のメリット

(1)企業価値の分析精度が高まる

従来あまり詳しく評価されてこなかった知的資産経営の評価、つまり企業が中長期的にどのように価値を生み出すか分析を行い、他社の差別化要因や企業価値が明確になることから金融機関などのアナリストや投資家の分析精度は向上します。

 

(2)企業のリスクを評価できる

「リスク情報」は経営に大きな影響を及ぼす可能性のある、外部にとって知りたい情報の中でも重要な情報です。なぜならこれまで、企業の経営に大きな影響を及ぼす「リスク情報」は、開示されている情報でもとくに見えにくい部分だからです。

企業の知的資産経営の開示内容を分析することで、企業が将来の成長のために、どのように取り組み、または取り組んでいないのかを明確化できること、それらを業界横断で比較することによって、企業の将来の事業リスクが鮮明に見えてきます。

リスクが将来的に顕在化した際数字としてまたは定性的に予見予測することが可能となればリスク分析の精度が高まります。

 

(3)成長性の高い企業を見抜くことができる

知的資産経営に関する情報開示では短期的な利益等の情報ではなく、中長期的な企業価値を高めるための価値創造に結びつく施策などが示されます。 金融機関のアナリストや投資家など企業評価者にとっては、将来業績の予測に重要な影響を与える企業の先行投資に関する情報を掴むことができるため、企業の 成長性を的確に見極めることができます。

知的資産経営を融資評価に結び付ける考え方は、金融検査マニュアル等との関連性を含め言及しています。

(「知的資産経営評価融資の秘訣」 経済産業省知的財産政策室/独立行政法人 中小企業基盤整備機構事業承継・知的資産経営支援室 平成21年4月)

知的資産経営については、スウェーデン、デンマークなど北欧の国から始まって、EUやOECD等、諸外国でも非常に注目されており、様々な取組が行われております。

その際、企業の社会的責任の観点から、経済・社会・環境の3側面のバランスを良くとりつつ事業活動を進めていくというトリプルボトムラインの考え方なども、知的資産経営の考え方と軌を一にしつつあります。

 

知的資産経営報告書の作成方法

知的資産経営報告書の作成には経営者の理念だけではなく企業全体が持つ有形無形資産をいかに活用し応用を続けるか、どのような独自性を発掘し続けているか、他社競争優位性をどのように発信できるかなど多様な企業分析力が必須となります。

経営に関しても経営者視線、従業員視線だけでは無く、第三者の目で強みを生かし業種横断を考慮した総合的な情報開示に結びつけることが最善な方法であることから、知的資産の専門知識を持った専門家はもちろん、企業経営の経験者へ依頼することをお勧めします。

 

知的資産経営の実現に向けて

「知的資産経営」は、将来に向けたチャレンジのために、そして会社の社会的役割を示すために必要なものです。

限りある自社資産を最大活用し、会社の「強み」や「弱み」を社内外で再評価したり、活かすべき知的資産の明確化を行うことは、企業経営力の強化となる要素でもあります。

現在および将来の取引先や金融機関などの外部のステイクホルダーに信憑性の高い評価を開示することは、企業の将来性を評価判断してもらうこととなり、将来の取引や融資に関するプラスの影響が期待されます。

社長がどんなによいアイデアを持っていても、それが社員に伝わり、会社全体の力として共感され活用されたり、外部の人々に影響を与えなければ意味がありません。

知的資産経営報告書の作成を通じて法人としての知的資産の活用を図るだけではなく、 知的資産マネジメントを実現し、将来の知的資産経営評価融資の獲得や、知的資産経営の実践、知的財産を拡大するなど、知的創造と、知的財産 経営 により将来の会社経営を支援することが、加藤萬国特許事務所の社会的役割です。

中小から上場企業まで企業経営の責任者としての経験を生かした知的資産報告書作成(知的財産報告書作成)の専門家として、また知的資産活用の経営パートナーとして活用してはいかがでしょうか。

 

 

 

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